日本たべもの総覧

日本たべもの総覧(2)

麦飯【むぎいい・むぎめし】

麦

日本では米に次いで麦が主食として用いられてきた。ごく最近まで田舎では米に麦をまぜて炊くことが普通であった。この場合には押し麦または挽き割り麦を用いる。丸麦の時はまず麦だけ炊いて、後で米を合わせて炊く。麦飯でよく知られているのは「麦とろ」である。これは「やまのいも」や「やまといも」を摺り下ろし、出汁または味噌を加えてすりのばしたとろろ汁を麦飯に掛けたものである。なお煎った大麦を粉にひいたものを「むぎこがし」といい、砂糖を混ぜてそのまま食べたり、湯を入れて練って食べたりする。菓子の材料にもなり「はったい粉」とも呼ぶ。

【あわ】

「あわ」には「おおあわ」と「こあわ」があり、それぞれ「梁」と「粟」の字をあてる。日本で栽培しているのはほとんど「おおあわ」であるが、文字としては「粟」が一般に用いられている。米に比べると蛋白質と脂肪が多く、炭水化物が少ない。うるち粟ともち粟の2種類があるが、味の良いもち粟は粟餅や菓子、飴や焼酎などに用いる。うるち粟は家畜や小鳥のエサにも使う。粟飯に用いるのはうるち粟で米が吹き上がったときに、あらかじめ洗ってザルに上げておいた粟を入れて炊き上げる。蒸らしてから混ぜ、温かいうちに食べる。注意しなければならないのは、粟には砂が混じることが多いことである。洗う際に絶えず入れ物を揺り動かし、底に砂を沈めて捨てるようにつとめる必要がある。

なおおせち料理の一つに粟漬けがある。これは「いわし」や「こはだ」などの魚を酢漬けしたものを、粟に生姜を刻み込んだ中に漬け込んだものである。粟ぬかは着色料にも用いるくらいであるから、粟を使った食品はどれも鮮やかな黄色を呈し見た目に美しい。

稗飯【ひえめし】

各地に稗田の地名があり、また稗つき節も残っているとおり、古代は言うに及ばず比較的近い頃まで、日本では稗は重要な穀物として栽培されてきた。古い記録には、税として稗を納めた例もある。

これほど重んじられたのは、稗が丈夫でやせ地でも育ち、病虫害に強いためである。しかし味は米よりはるかに劣り、成熟も不揃いで、実より茎葉の方がよく育つので、次第に疎んじられ、山間のやせ地でだけ栽培されるようになった。今日では普通、水田などにもし生えると雑草のように引き抜いて捨てている。したがって稗を食べる機会はめったにない。稗飯の調理法は、稗をよく水に浸して米に混ぜ合わせて炊くこととされている。

黍飯【きびめし】

有史以前、すでにヨーロッパやアジアなどで広く栽培されていた穀物で、日本でも「万葉集」などに登場する。剛健で生育期間が比較的短いため開拓地に向き、また救荒作物として適した。実は蛋白質をかなり含むので米の代用になり、消化率も低くない。これらの事情から作付面積は減ったが、栽培され続けてきた。

実には「もち」と「うるち」の2種があり、もち黍は餅や酒に、うるち黍は飯や家畜の飼料に用いる。ただし一般に「きびめし」と称しているのはもち黍を用いたもので、やや柔らかめに炊き上げ、温かいうちに食べると、独特の風味がある。黍製品でよく知られているのは童話「桃太郎」にあらわれる「きび団子」で、現在岡山県の名物菓子になっている。しかしこれは「求肥」で作ったもので、古名「吉備国」にちなんで名づけられたもの。歴史も幕末以後という。

参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊

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