日本たべもの総覧

日本たべもの総覧(7)

そば【そば】

そば

寒冷地ややせた土に適したそばは、すでに奈良時代以前から栽培され備荒食糧として重んじられた。近世以降西日本のうどんに対し東日本の代表的麺類の座を占めている。調理法はほぼうどんと同じであるが、そば粉を熱湯でまぜ醤油を落として食べる「そばがき」は独特の風味がある。なお江戸時代のそば専門店「二八そば」は値段が十六文だからという説はあとから生まれたもので、小麦粉とそば粉の混合率2対8に基づいている。しかし現在のそばは一般に小麦粉の割合が多くなっている。

パン【ぱん】

パン

パンは粉食の民族の間では古くから作られ、エジプトではすでに紀元前5000年頃に記録されている。現在のような純粋なイースト菌を用いたパンはわずか100年ほど前から始まったばかりである。粒食を主とする日本では似たようなものはあったが、戦国時代南蛮船によって初めて本格のパンを知った。ちなみにパンの語源はポルトガル語「波牟(はむ)」だという。パンが広まったのは、幕末の兵学者高島秀帆の門弟作太郎が江川太郎左衛門に指導して製造させたことによるが、一般の人が口にするようになったのは、日清戦争の際軍用食糧として使われてからである。長く粒食に馴れた日本人はたちまち日本独自の「あんパン」を発明し、今日では主食として欠かせぬ食品となっている。

【さい】

野菜・魚・肉など、飯に合わせて食べるものの総称で、今日では主食に対して副食物という字をあて、普通は「おかず」といっている。おかずは数々の品数を取り合わせるところから生まれた。なお平日の菜を上方では「お晩菜」、江戸では「お惣菜」と呼んだ。

【しる】

味噌汁

日本で代表的な汁は「みそ汁」と「すまし汁」で、すまし汁は鰹節と昆布で取った出汁に塩と醤油で味をつけたものである。みそ汁は「おみおつけ」または「おつけ」とも呼ばれる。なお同じ汁でも飯ではなく酒肴とともに用いるときは「吸物」と呼ばれることが多い。吸物のことを古くはあつもの(羹)と称した。

【なます】

食品はすべて加工するほど栄養価が落ち、また生食がもっとも消化しやすいといわれる。「なます」は日本最古の調理法でもちろん生食である。現在のさしみも古くはなますと呼ばれていた。新鮮な生肉を切りさき、生酢で食べるところから生じた言葉で、元来は獣肉にも用いたが、現在は酢の物として氷頭なます、大根なます、柿なますなど、魚貝や野菜を主とするようになった。生臭物(魚貝類)のなますを鱠と書き、精進もののなますを膾と書く習慣がある。酢は二杯酢、三杯酢、生姜酢、蓼酢、酢味噌、胡麻酢、辛子酢、黄身酢など、季節や材料、好みによって種々の合わせ酢がある。

刺身【さしみ】

刺身

古くから「さしみなます」「打ち身」とも呼ばれた、切って生食する肴のひれを刺して盛り付けたのが語源という。「なます」が醤油の発達によって「刺身」に変化したともいわれる。東西の漁場や好みの違いがあり、関東では鮪や鰹などの赤身、関西では鯛や鱧などの白身を尊ぶ習慣があった。関西では「つくりみ」「おつくり」と称する。また薬味として山葵、生姜、辛子などの香辛料がつけ醤油に添えられる。

参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊

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